日いづる処の美の日誌

光梅|美しいものを慈しむくらしの記録

【松戸・本土寺】梅雨のアジサイを訪ねて|癒しの一人歩き

曇り空、梅雨の時季。
気持ちが少し落ち込むとき、そっと癒しをくれるのはアジサイ。

千葉県松戸市にあるアジサイ寺、本土寺(ほんどじ)。
周囲から勧められ、一度訪れてみたいと思っていた場所だ。

お寺のホームページには、アジサイの見頃は6月中旬と書かれていた。その時期を逃せば、花の表情は変わってしまう。
見頃の時季に訪れたいと思い、6月13日、一人で本土寺へ向かった。

JR常磐線・北小金駅で下車。

改札を出て左手、北口へ。

そこからまっすぐ進み、突き当たりを左へ。
階段を降りると、すぐに横断歩道がある。

それを渡ると、本土寺へ続く道に入る。

道沿いをまっすぐ歩く。
途中、両側に自転車置き場が見えてくるが、そのまま直進する。

左手には、くず餅やあんみつで知られる「船橋屋」がある。

その前を通り過ぎ、信号のある十字路もそのまま直進する。

見落としがちだが、信号機のすぐ後ろに「本土寺」と刻まれた石門が立っている。

そのまま直進していく。ここから先は住宅街だ。

この地には、鎌倉時代から室町時代にかけて、平賀氏という在地武士の居館があったと伝わる。また、江戸時代には水戸光圀が参道整備に関わったという話も残る。

その後、この一帯は水戸街道の宿場町「小金宿」として栄え、本土寺の門前町として多くの人が行き交った。そんな歴史に思いを巡らせながら歩いていると、古い石垣や木立の風景がいっそう趣深く感じられた。

そのまま道なりに進むと、やがて何も刻まれていない石門が現れる。

さらに進み、左手に並ぶ土産店を過ぎると、朱塗りの仁王門が見えてきた。

ここが、日蓮宗大本山・長谷山本土寺。北小金駅から徒歩約15分。

本土寺は、鎌倉時代の建治3年(1277年)頃、日蓮聖人の高弟・日朗(にちろう)上人によって開かれたと伝えられている。

江戸時代には幕府の保護を受け、境内には葵の紋や秋山夫人供養塔など、歴史を感じられる見どころも点在している。

拝観案内
通常拝観
■ 5:00~17:00(最終入場 16:30)/無料

あじさい・紅葉の有料参拝期間
■ 9:00~16:30(最終入場 16:00)/拝観料 500円

本堂手前には、立派な五重塔がそびえている。

境内ではアジサイが見頃を迎えていた。

まずは本堂にお参りを済ませ、順路に沿って歩き始める。

竹林の中を歩く時間も心地よい。

境内には5万本以上のアジサイが植えられ、歩く場所によって色合いや景色が少しずつ変わっていく。

花菖蒲とアジサイの見頃が重なれば、この場所はひときわ美しい景色になるのだろう。

6月13日に訪れたときには、見頃が6月上旬の花菖蒲は終わりかけだった。

10種類以上あるアジサイは、青や紫、白、ピンクと色彩豊かで、歩いているだけでも目を楽しませてくれる。

境内にはベンチも点在しており、花を眺めながらゆっくり休憩できる。

ゆっくり散策しても所要時間は60〜75分ほど。

平日にもかかわらず、多くの参拝者がアジサイを楽しんでいた。

帰る前にもう一度本堂へお参りし、本土寺を後にした。

来た道を戻る。

参道には、お野菜やお饅頭、お漬物などを並べるお土産店が二軒ある。

焼き団子は人気。

店の奥にはベンチもあり、散策の合間にひと息つくのによさそうだった。

そうこうしているうちに、北小金駅へ戻ってきた。

あんなにたくさんのアジサイが咲いている景色を見たのは初めてだった。

梅雨空の下を歩いた時間は、気持ちまで少し晴れやかにしてくれたように思う。

紅葉の季節には、また違った表情を見せてくれるのかもしれない。

※拝観時間や拝観料などの最新情報は、公式サイトをご確認ください。

https://www.hondoji.net/

東京ステーションギャラリー「カール・ヴァルザー展」鑑賞記|知らなかった画家との、思いがけない出会い

東京ステーションギャラリーで開催中の「カール・ヴァルザー展」を鑑賞。予備知識のないまま訪れた展覧会で、思いがけず感動した体験を綴っています。

また、よいご縁がめぐっている。

JR東京駅の丸の内北口改札を出て、すぐ右手にある東京ステーションギャラリー。

そこで開催されていた『スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』展。

今回訪れたのは、この展覧会である。

実は、こちらの広告もSNSでよく見かけていた。
衣装デザインが可愛らしい。歌舞伎俳優の絵も気になる。
だから、都合が合えば観に行きたいと思いつつ、またしても、閉幕間際になってしまった。

存じ上げないことばかりで、お恥ずかしいけれど。
カール・ヴァルザーという画家、そしてその作品を、私は何ひとつ知らなかった。

会場に到着したのは、平日の14時を過ぎた頃だと思う。

当日券を購入するため、2台ある券売機の順番を待つ。
次が私の番だ。思ったほど混んではいない。

エレベーターで3階へ。

ドアが開き、すぐに「ごあいさつ」のパネルを読み始める。

カール・ヴァルザー(1877-1943)は、スイス生まれの画家。
挿絵や舞台美術など幅広い分野で活躍。

「出品作すべてが日本初公開となります」
「カール・ヴァルザーの名は日本で広く知られていません」
とある。

「知られていない画家の展覧会?」
「えっ? 私、そこにお金を払うの?」

な〜んて、ちょっとイジワルな感じで作品の前に立った。

「ところが」なのである。

まず、鉛筆で描かれた男性の肖像画が3枚並ぶ。

美しいのだ。

柔らかい髪のカーブ。
秘めた優しい眼差し。
言いたいことはあるのに、それを飲み込んで相手の話を聴いているような表情。
意思の強さを感じさせる端整な顔立ち。

一瞬を切り取った描写なのに、人物の人となりまで伝わってくる。

次へと進んでいく。

窓辺から外の風景を描いた作品が2枚ある。

題名はいずれも『窓からの眺め』。

同じ題名なのに、描かれている風景は異なる。

一枚目は、窓辺に花瓶が飾られ、暖かな陽ざしが描かれている。
もう一枚目は、窓が開き、家々の屋根と、その向こうの山が細かく描かれている。

技法もタッチも異なる。
同じ題名の作品で、これほど違う表情を見せるのか。

先日、アンドリュー・ワイエス展で見た窓の絵を思い出した。
窓が開いている絵は、私の胸にまで風が通るようで、清々しい。

そして、この辺りから作品のタッチが、より繊細になってくる。

木々の描写が見事だ。
画面全体に独特の空気が漂い、思わず「はっ」と息を飲む。

『テラスからの眺め』
曇り空。テラスに出た女性が、水やりをしているのだろうか。
木の葉が一枚一枚、細かく描かれているが、その透け感が美しい。

『人形の乳母車と少女』
雪景色の中を散歩の途中なのだろうか。小さな女の子が毛皮のコートを着てこちらを振り返っている。その毛の一本一本が丁寧に描かれ、暖かさが伝わる。乳母車の市松模様に編まれた籠も見事だ。雪の中の茂みも繊細で、静かな世界が広がっている。

『バルコニーに立つ女』
手前の濃い緑の木々が、重くならず、葉が細かく幾重にも重なりながら描かれている。
奥に見える建物が、空間に奥行きと品格を与えている。

『森』
緑の山に、背の高い針葉樹が覆いかぶさるように立つ。
そしてオレンジ色に輝く空。眩しい。思わず足が止まる。

これらの四作品は、重なり合う葉や毛皮などが、立体的でありながら、どこか抜けるように描かれている。
丁寧、繊細、美しい。言葉が追い付かない。

とにかく、私は見惚れた。

いや、多分。

周りの鑑賞者も、同じだと思う。

ある人は、一つの作品をずーっと見ている。作品の前から動かない。

また、ある人は、一つの作品を近くから見たり、遠くから見たりしている。

いやぁ、その気持ち、よくわかる。

だから暗黙の了解で、お互いに譲り合いながら、空いている作品から見ては戻り、また見直す。

私もまだ会場は序盤なのに、何度も同じ作品を鑑賞し直していた。

鑑賞者は少なくはないけれど、混雑していなかったからできたことだった。

パンフレットにもなっている『貴婦人の肖像』は、額縁を含めてとても素敵な作品だった。

そして、まだまだ続く。
『散歩する優雅な男女』
『夜の散歩』
『アトリエの窓からの眺め』

これらの作品を見ていると、絵画の中に入り込み、自分がその中にいるような錯覚を覚えた。気づけば、お気に入りの作品になっていた。

さらに、
『隠者』
『デルフトの街角』

とにかく美しく、細かく、柔らかい。

4章あるうちの1章しか見ていないのに、感動の渦に飲み込まれていた。

東京ステーションの歴史あるレンガの階段を下りて、
「日本滞在」の章へ。

1908年4月から約半年。
ドイツの出版社の依頼により、小説家ベルンハルト・ケラーマンと共に来日し、横浜、東京、京都、伊勢、宮津などを巡った。
その滞在をもとに、ケラーマンは『さっさよ やっさ日本の踊り』『日本散策』の2冊を出版し、いずれもベストセラーとなった。ヴァルザーはその図版や装幀を担当している。

約120年前、外国人の目を通して当時の日本が描かれている。

途中、10分ほどの【宮津・天橋立】の動画を見るコーナーがある。
それを先に観ておくと、より楽しめる。

ヴァルザーが見た日本の美しさは、今もどこかに残っている。そんなことを、彼と一緒に確かめているような気持ちになった。

素朴でありながら美しく、品格があり、そして日本への敬意を持って丁寧に描かれていることがわかる。

特に、歌舞伎の女形の描き方には感動した。
美しい女性としての姿の中に、演じている男性の気配が確かにある。
その両方が、きちんと描き分けられているのだ。

歌舞伎の演目が、習作も含め何枚も描かれており、『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)』の阿古屋の演奏場面も印象的だった。

私は今年4月、坂東玉三郎さんの舞台で、実際に玉三郎丈の阿古屋の演奏場面を拝見していたこともあり、絵画と舞台の記憶が重なり合い、忘れられない思い出となった。

多くはここで、語るまい。
芸者・福子の作品も、京都の祭りも、納涼床も、どれも趣があり、美しい。
日本のよさを、手紙にも絵画にも、静かに丁寧に残してくれている。
日本という国の姿を、静かに見つめ直すような展示だった。

ヴァルザーには、弟で作家のロベルト・ヴァルザーがいる。
英国の挿絵画家オーブリー・ビアズリーの影響を受け、書籍の挿絵や装幀なども手掛けていた。

小さな枠の中に、黒と白で描かれた挿絵が並び、思わず見入ってしまうほどの見応えがあった。

そして、最後に見たかった舞台の衣装デザイン群である。

『ロミオとジュリエット』
『フィガロの結婚』
『ドン・パスクワーレ』など。

衣装デザインのスケッチは、凝っていて美しく、鮮やかで、そして可愛らしい。

もし美術館ではなく、日常の中にこれらのデザイン画があったなら、登場人物たちが、額縁から抜け出して表情豊かに、身振り手振りで物語を語り出してきそうである。そんなことを思いながら、最後の展示室を後にした。

最後に。
カール・ヴァルザーは、恋人の死や第一次・第二次世界大戦といった時代を経て制作を続けた画家であり、戦争によって初期の作品を失ったとも言われている。

その作品には、繊細さや美しさ、儚さ、そして温かさが感じられた。

作品を見終えて思ったのは、どこかピュアな心を持ち、それをそのまま表現に結びつけた画家だったのではないか、ということだ。

偶然なのか、あるいは必然なのかはわからない。ただ、こうして鑑賞する機会を得られたことは、とてもありがたいことだったと思う。

あまりにもよかったので、図録を購入した。

2026年/キュレイターズ発行/B5判変形/360頁/3,850円(税込)

東京ステーションギャラリー
2026年6月21日(日)まで

大阪中之島美術館
2026年7月4日(土)~2026年9月27日(日)

【アンドリュー・ワイエス展感想】窓の向こうを吹き抜ける風を追いかけて|東京都美術館 これが一番おすすめ。

アンドリュー・ワイエスのことをほとんど知らなかった私。ところが東京都美術館で作品と向き合ううちに、その透明感と風の描写に、すっかり心を奪われてしまった。これは、そんな出会いの記録です。

私は、「美術館巡りが好き」と言いながら、存じ上げないアーティストや作品の方がずっと多い。

実は、アンドリュー・ワイエスもその一人だった。

SNSでは何度も「アンドリュー・ワイエス展」の広告が流れてくる。

ここまで繰り返し目にすると、さすがに気になってくる。

しかも東京都美術館開館100周年記念の企画展だという。

「そんなに推しているなら、一度見てみようかしら」

そう思って、東京都美術館へ向かった。

到着は、平日の14時頃だったと思う。

私、東京都美術館へ来るのは久しぶりのような気がする。

当日券も5〜6名しか並んでおらず、すぐに購入ができた。


入場。

知識も、先入観もなく初めてワイエスの作品の前に立つ。

確か、最初の作品は、ワイエスの自画像だったと思う。

えっ、初っ端から自画像?!

すごい自信だなぁ〜。
ジェームス・ディーンに似てる?
それが最初の感想で、

「なんという透明感」
それが、私の第一印象だ。

次に、テンペラ技法の作品が目に留まる。

あれっ?
テンペラ技法って、卵に顔料を混ぜて描く技法ではなかったかしら?
すぐ乾くし、扱いも難しかったような……。
私の頭の中は、イタリア・ルネサンス期のダ・ヴィンチの壁画へと飛んでしまった。

さらに面白かったのは、作品ごとに質感がまるで違うことだ。

いわゆる想像どおりの、絵具を水にとかした水彩画もあれば、ドライブラッシュといって、水分を限りなく絞った筆に、わずかな絵の具をつけ、紙にこすりつけるように描く水彩画もあり、ザラザラ、デコボコとした凹凸の表現が、なんとも楽しい。

水彩絵の具、木炭、インク、ペンなど、使われる画材によって作品の表情は大きく変わる。

これも、ワイエスの魅力なのか。

途中、説明パネルに、

「色彩によって空気感や温度、音を自由に表現できることが魅力」といった内容が書かれていた。

ワイエスは、温度や音も表現できるの?
そんなことが本当に可能なら、私、好きかも。

一つひとつの作品を見るごとに、次の作品への期待が膨らんでいく。

ワイエスの作品には、窓や扉、光と影が巧みに描かれていた。

説明によると、ワイエスは「境界」を重要なテーマの一つとしており、窓や扉を通して、内と外、生と死といった世界を表現しているらしい。

確かに、どの作品も、静けさ、孤独、寂しさ、哀愁といったものが、チラチラと見え隠れしているように感じた。

けれど、明るさを表現している描写では、眩しいくらいに明るく、私には希望というか、救われた世界に感じられるのだ。

本当に「窓」の絵が多い。
閉じられた窓、開けられた窓。割れた窓、朽ちた窓。

私も、窓が描かれている作品は大好きだ。

特に、窓が開かれている作品を見ると、絵の中を風が通り抜けているように感じる。その風は、絵を通り抜け、私のもとにも届く。そして、私の内側にも新鮮な風と気を巡らせてくれるように感じるからだ。何かを手放すことができたような、何かを昇華できたような。 そんな清々しさを、私は感じるのである。

ところで、作品を観ていて不思議だなと思うことがあった。

少し離れた場所から見ると、ごく平面的な絵に見える。

ところが間近で見ると、絵の中の窓や壁、草や木々が立体的に浮かび上がってくるように感じるのだ。

そして、その繊細な写実は、一瞬写真のようにも見える。
けれど、写真とは違う。一つひとつの作品の質感が、なんとも心地良いのだ。

魅了されて動けない。

ただただ、見惚れてしまうのである。

この展覧会では、オルソン・ハウスという一軒の家と、その住人である姉クリスティーナと弟アルヴァロの暮らしを題材にした作品が、何枚も登場する。

田舎で姉弟二人が暮らす風景は、『赤毛のアン』に出てくる、マリラとマシューのいるグリーン・ゲイブルズを連想させる。

ワイエスの作品には、生と死の気配が静かに漂っている。

そのせいだろうか。
老いていくオルソン姉弟の姿を見ていると、マシューの死まで思い出された。そんなことを頭の片隅で思いながら、作品を観ていた。

また、作品を観ていて気づいたことがある。

ワイエスは、生活の中にある何でもないものをモチーフとしているのだ。

『洗濯物』『青い計量器』『穀物袋』など。

普段なら見過ごしてしまいそうなものばかりである。私は、何を見せられているのだろうと思いながらも、その巧みな描写に引き付けられる。

これが、ワイエスの持ち味なのね。

そして、一番楽しくて、ワクワクしながら見た作品群は、「習作」から「完成」までの過程を追える展示だった。

習作の最初の作品は、何が描かれているのか、さっぱり分からない。

でも、その次の習作、さらに加筆された習作と見ていくうちに、少しずつ完成形が見えてくる。

そして最後に完成作品へ辿り着く頃には、ワイエスが何に目を向け、何を表現しようとしていたのかが浮かび上がってくるのだ。

その過程が、とても趣深く、感動した。

最後に、私が特に心を動かされた作品は、三点ある。

《海からの風》習作群
窓、カーテン、風、光。
習作を重ねるごとに、それらが少しずつ画面に現れてくる。
そして完成作へと近づくにつれ、ワイエスが何を描こうとしていたのかが見えてくる。なかなか目にすることのできない制作の過程。
その作品群に触れられたことは、私にとって大きな収穫だった。

《クリスティーナ・オルソン》
今回の展覧会のポスターにもなっている作品。
扉に身体を預けるクリスティーナ。
その姿には、どこか孤独や寂しさが漂っている。
けれど、私の目を引いたのは、風になびく髪だった。
絵画の中では、今もなお柔らかな風が吹き続けているように感じる。
その一瞬を捉えた描写から、私は目を離すことができなかった。

《花びら》
満開を少し過ぎた花。
風に乗って花びらが舞い、香りまで漂ってくるように感じる。
その一瞬の美しさと儚さが、なんとも尊いのである。

『花びら』

正直、ここまで惹き込まれるとは思っていなかった。
けれど今は、ワイエスの他の作品も、もっと観てみたいと思っている。


※会期は2026年7月5日(日)まで。
東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展

【東京国立博物館】特別展 百万石!加賀前田家|国宝『日本書紀』からルノアールまで

東京国立博物館で開催された『特別展 百万石!加賀前田家』へ。国宝『日本書紀』や天下五剣・大典太光世、そして思いがけないご縁との出会いを綴ります。

以前から気になっていた『特別展 百万石!加賀前田家』。

閉幕まであとわずかとなったこの日、ふと思いついて向かった。

会場は、東京・上野の東京国立博物館。

会期終了が迫っていることもあり、さぞ混雑しているのだろうと覚悟していた。ゆっくり鑑賞できなくてもよい。せめて、その雰囲気だけでも味わいたいと思った。

11時過ぎに到着。実際、当日券売り場には人だかりができている。

購入時に表示されていた入場制限は「0」。
ひとまず安心したものの、油断はできない。チケットを手に、平成館へ向かった。

平成館の前に人が並んでいない。
これは期待してよいのか。

今回は会場に入って右手にあるトイレを済ませ、100円(返却式)のロッカーに荷物を預ける。ポケットに入れたのは、チケットと携帯電話、それからクレジットカードだけ。

いざ出陣。

第1会場の入口。
照明が落とされ、館内は薄暗い。

思わず足が止まった。

一気に、戦国時代へ。

正面には大きな梅鉢紋。
その下で、黄金の兜が天へ向かうようにそびえ立つ。そして鎧が厳かに輝いている。

さらに一歩進む。

そこに展示されていたのは、前田利家が徳川家康を迎えた際に着用したという陣羽織。

ふと考えた。

ということは、この展示の入口は、前田利家が来場者を出迎える場面として演出されているのだろうか。

正面の鎧兜。

そして、その先にある陣羽織。

なれば、なかなか粋な演出である。

されど、ここから先は幾重もの人垣。

列はなかなか進まない。

右手には歴代当主の鎧兜がずらりと並び、

左手の壁一面には見事な陣羽織が掛けられている。

中央には、鎧や兜が細部まで繊細に描かれた軍装図録。

圧巻である。

ただ、観ているうちに三つの思いが浮かんできた。

一つは、少なくとも今、目にしているものは戦で使われた品々だということ。
このような武具で、どれだけの命が守られたのだろうか。

二つめは、これらの武具を作った人たちのこと。
武具は男性の職人かもしれない。

では、陣羽織はどうだろう。
見事で、センスが光る陣羽織を仕立てたのは誰か。
奥方や女性たちが、無事や勝利を祈りながら、一針一針縫ったのであろうか。

最後は、これらの品々を今日まで伝えてきた人たちのこと。
修理を重ねたものもあるだろう。
それでも、よくぞここまで美しい状態で保管し、維持してこられたものだと感心せずにはいられなかった。今、こうして目にすることができるのは、その人たちのおかげである。感謝が自然と溢れてきた。

会場を中へと進んでいく。
一列目は人で、みっちり埋まっている。
私は二列目、三列目から、人の頭越しに展示を覗かせていただく。

人だかりが出来ていた。

どれどれと目をやる。

暗闇に浮かび上がる、黒い漆の箱。

花をかたどった螺鈿と金細工。
美しい、では済まされない。

これは、「もしや?」と思い説明文に目をやる。

ふふふ、ご縁ですね。
以前、根津美術館で観た、在原業平ゆかりの八橋と燕子花を題材にした『八橋図茶箱』である。

在原業平は、いつの世も大人気なのですね。

さらに歩みを進めていくと、たまに、ぽっかりと人のいない空間ができた。
そんな時は、すかさず一列目へ。ここぞとばかりに見せていただいた。

不思議なのだが、そんな時に限って、国宝や重要文化財をゆっくり拝見することができた。

「茶皺韋包糸巻太刀」。

天下五剣のひとつである国宝、大典太光世である。

刀剣に詳しくない私は、説明文を読んで初めて知った。
足利将軍家から豊臣秀吉を経て、前田利家へと伝わった名刀なのだという。

なぜか堂々とした趣きがある。

しかも、神がかった輝き。

後で調べてみると、この名刀にはやはり逸話があった。

当時、大典太光世は豊臣秀吉のもとにあった。
前田利家の娘、豪姫の病はなかなか治らず、人々は「狐憑きではないか」とまで噂したという。そこで利家は、霊力があると伝わる大典太光世を秀吉から借り受け、豪姫の枕元に置いた。すると病は回復したという。ところが刀を返すと再び病み、また借りると快方に向かう。その繰り返しを見かねた秀吉が、最終的に前田利家へ大典太光世を与えたと伝えられている。

なるほど、頷ける。

その名刀の横には、赤漆に金の平蒔絵で龍が描かれた大小の鞘が並ぶ。
重要文化財『朱塗雲龍蒔絵大小』である。

さらに進んでいくと、
茶の湯で使う道具が展示されている。

まず目に飛び込んできたのは、赤い漆塗りの丸盆。
その上には、茶道具の格付けにおいて最上位とされる「大名物」。
重要文化財『唐物茄子茶入 銘 富士』が静かに置かれていた。
そして、その傍らには千利休がこしらえたという茶杓。
戦国武将たちが愛した茶の湯の世界が広がっていた。

極めつけは、国宝『日本書紀』だ。

まるで何事もないように、さらりと展示されている。

私は思わず、「日本しょ……えっ?日本書紀って書いてありますけど?」と二度見した。

ホント?

嘘でしょう?

本当に?

と、何度も説明文と目の前の『日本書紀』を交互に見つめてしまった。
世が世なら、このようなことはあり得ない。

「日本書紀」は、漢字がつらつらと並んでおり、残念ながら読むことができない。所々に小さくカタカナが振られている。平安時代には、すでにカタカナ文字があったことにも驚く。

また、目を先にやると、私は存じ上げなかったが、国宝『水左記』、『北山抄』と続く。

ここまで来ると、気軽な気持ちで来てしまったことを少し後悔した。もう少し予習をして来ていたら。

いま目の前にあるものが、どれほど貴重な史料なのか。そして、どれほど幸運な出逢いだったのか。もっと深く味わえたかもしれない。

終盤は、公爵前田家の展示だ。

私は、ずっと加賀前田家は金沢にあると思い続けていた。

ところが展示を見て驚く。

前田家は江戸時代、加賀百万石として広大な上屋敷を構えており、その場所は現在の東京大学本郷キャンパスの大部分にあたるのだという。

さらに、東大のシンボルとして知られる赤門も、前田家ゆかりの門である。

明治以降は駒場へ移り、現在の旧前田家本邸へと続いていく。まさか東京大学や駒場の歴史と深く結びついていたとは。本当に驚いた。

最後の展示室は、旧前田家本邸洋館の壁紙を再現し、室内に飾られていた品々が展示されている。

最後の最後まで、驚かせるのが上手い。


なんと、シューベルト、モーツァルト、バッハの自筆譜が並ぶ。

そして、16代前田利為侯爵が蒐集した『欧州古銭標本』。

青いインクで書かれたフランス語は、利為侯爵直筆だという。

さらに驚いたのは、ルノアールの『アネモネ』まで所蔵していたこと。

クラクラするほど著名で貴重な作品に、時代を超えて触れることができた。

もう、ここまで来ると驚かない。

加賀百万石の前田家は、そういうお家柄なのだ。

戦国の世から江戸、明治、そして現代へ。

前田家の至宝は、多くの人の手によって守られ、受け継がれてきたのだ。

当時は、家を守り、残すことが何よりも重要な時代だった。

戦に勝つこと。

領地を守ること。

跡継ぎを育てること。

その積み重ねの先に、家の存続があった。

前田家は、まさにその歴史を生き残った「勝者」といえるのではないだろうか。

だからこそ、戦国時代の武具や刀剣だけではない。

茶の湯の道具も。

古典籍も。

洋館を彩った美術品も。

今日まで受け継がれてきた。

そして今、私たちはそれらを目の前で見ることができる。

実は、私はまだ駒場公園にも金沢にも行ったことがない。

加賀百万石のお殿様・前田利家。およそ五百年前の戦国時代。そして金沢。
私にとっては、いずれもどこか「遠い世界」という印象があった。

けれど、この展示を通じて、前田家が東京に拠点を移していたことを知り、金沢も新幹線で一本で行けることを思うと、ぐっと身近になった気がする。一人で勝手に、お近づきになれたような気分でいる。

混雑もあって、堪能しきれなかった展示品もある。きっと、まだまだ語り尽くせない前田家の歴史や、人々の営みが残っているのだろう。

この展示をきっかけに、駒場や金沢にも、ぜひ行ってみたい。

それまでに、もう少し知識も蓄えておこう。
また一つ、新たな視野を広げる扉が現れたのだから。

歴史を紡ぎ、守り、受け継いできた人々に思いを馳せながら。

そして、思いがけないご縁に、ありがとうを添えて。

※前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」の詳細はこちらです。
東京国立博物館 - 展示・催し物 展示 平成館(日本の考古・特別展) 前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」

BTS表紙雑誌まとめ2026|AERA・anan・Rolling Stone Japanの発売日・価格・予約情報一覧

BTSの
ARMYの皆さん、
ご興味のある皆さんへ。

5月、6月とBTSが表紙を飾る雑誌の発売が目白押しですね。

皆さん、ご予約の準備は大丈夫でしょうか。

実は今年3月、BTSの雑誌『GQ JAPAN 2026年4月号増刊』を発売翌日に買いに行ったときのことです。

最初に行った書店ではすでに完売しており、取り寄せもできませんでした。
その後、駅前の書店を2軒回りましたが、状況は同じでした。

東京ドームのチケットも全落ちしていたこともあり、「雑誌まで手に入らないのか」とかなり焦りました。

4軒目、家の近くのスーパーの書店で、ようやく残り数冊のうちの1冊を確保することができました。

予約をしておけば、買い忘れの心配もなく、手元に届く安心感があります。

私のように4軒も書店を巡って探し回ることを考えると、早めの行動は大切だと感じています。

確実に手に入れたい方は、今のうちの予約がおすすめです。

BTSの活動再開を待つARMYにとって、雑誌はメンバーを身近に感じられる楽しみのひとつです。

次の日本公演を楽しみに待ちながら、私も雑誌の写真やインタビューを読み返して過ごそうと思う。

さて、そこで今回は、
2026年5月〜6月に発売予定のBTS表紙雑誌をまとめました。
現在予定されているのは、

🔹『AERA』6月1日号(5月25日発売、税込650円)
表紙:BTS
内容:ライブ写真や特集記事掲載予定

🔹『anan』6月24日号増刊(6月17日発売、税込1,100円)
表紙:BTS
内容:ライブグラビアや特集企画掲載予定

🔹『Rolling Stone Japan』vol.35(6月25日発売、税込1,800円)
表紙:BTS
内容:特集記事やインタビュー掲載予定

※情報は記事執筆時点のものです。最新の価格や在庫状況は各リンク先の商品ページでご確認ください。

BTSのCDを聴きながら雑誌をめくる時間。
そんな好きなものに触れるひとときは、日々の暮らしに小さな癒しと彩りを与えてくれます。

葛西臨海公園|平日一人散歩。潮風と木漏れ日に心をほどく

ついつい家に引きこもりがち。心と身体を癒したくて、自然のエナジーに包まれる場所を求め、平日、一人で葛西臨海公園を訪れたことを綴っています。

外へ出て自然に触れたい。そう思った。

目を閉じて、ゆっくり呼吸を繰り返し、開放されていく自分を想像してみる。

吸って吐いての呼吸が、よせては返す波に似ているからだろうか。

弓のように曲がった海岸が目に浮かぶ。その周りに松林が見えた。

都内で似たような場所で思いついたのが、葛西臨海公園だ。

東京ディズニーランドの舞浜駅の隣にある、京葉線と武蔵野線が通る、葛西臨海公園駅。

人混みを避けたくて、平日を狙って一人で訪問した。

改札を出て、プラットフォームの階段を降りる。

噴水と観覧車が目を惹く。

園内へ続くストリートは広い。
視界が開けて、開放感が半端ない。

道なりに進むと、左手側は工事用のパネルで囲われている。中には巨大なクレーンが4機。

調べてみると、開園から35年が経っているそうだ。老朽化や最新技術の導入を踏まえ、今ある水族園の隣に、新たな水族園を建て直す。

現在の葛西臨海水族園の入口。

リニューアルオープンは2028年3月の予定。

海を体感できる空間や、自然との共生を意識した新たなエリア。レストラン、カフェも誕生する。

一方で、シンボルのガラスのドームや、巨大水槽のマグロの群泳は、引き続き継続。世界一の水族館を目指すらしい。

大人でも楽しめそう。

今回は、一人のんびり潮風に吹かれたい。海岸を目指す。

メインストリートの突き当たり。
展望レストハウス「クリスタルビュー」。


近くで見ると美しい。

入ってみると、数人しかおらず、ほぼ貸切状態だ。

2階へ上がる。

正面の暗いトンネルを抜けると、ガラスのドーム。

右側に、東京ディズニーランドの「スペースマウンテン」や「シンデレラ城」、ホテル群が見えた。

同じように存在しているのに、あのエリアは夢の国。

ひと息ついて、スロープを降りる。北側と、

南側。

ここ。
外から見ても、中を歩いても、美しい光景。
私、一人が幸い。

園内には、所々にカフェやトイレ、売店、出店、自販機もあり、飲食には困らない。

手ぶらで、ぶらりと来れるのも嬉しい。

いよいよ海に近づいてきた。
平日なのに、思ったより人が多い。
幼稚園の遠足や、カップルもいる。
休日は、さらに混雑しそうだと感じた。

奥に見えるのは、葛西渚橋。

ここを渡る。

橋から見た東京方面。
少し、複雑な気持ちになる。

はぁ〜。浜辺に着いた。西なぎさ。

人口の浜辺。それでもいい。

ザブーン、シュワシュワシュワシュワ。
ザブーン、シュワシュワシュワシュワ。

地球が呼吸をしているのかな。

ザブーン、シュワシュワシュワシュワ。
ザブーン、シュワシュワシュワシュワ。

波の音。ずっと聞いていられる。
耳で癒され、目で癒され。
潮風は、私の心と身体をほどいていく。

何時間でもいられそう。

ゴゥォーーー。
飛行機の爆音。

空が高い、空が広い。
眩しさもある。
飛行機が、なかなか見つからない。

どこに行くのかな。
ぼんやりと、空の彼方へ消えてゆく。

そろそろ戻ろうか。


橋を渡り、開けた道へ。


チラチラした木漏れ日が好き。

木立のなか。
小鳥のさえずり…?

鳴き声が…はげしい。

しばらく聞いていたら、奥に座っているご老人。小鳥の声に似た、笛を吹いていた。

いや、小鳥と会話をしているのかもしれない。

いい。
いいよ。小鳥とコミュニケーションなんて。

芝生が青くて、広くて。

最後に「ダイヤと花の大観覧車」。

大迫力。昼間もよさそうだけど、夕方の景色美しいだろうな。

こちらはカジュアルな装いがベスト。
芝生や浜辺に行くのなら、スニーカーとかサンダルなど
履きなれた靴がいい。

ふぅ〜。1時間ちょっといたのかしら。
心地よい疲れ、大満足。

ここは、一人で訪れても違和感はない。
そう感じるのは、私だけ?ふふっ。

今宵はぐっすり、眠れそうだ。

部屋にひとり。

静かな音を流しながら、今日の余韻をもう少しだけ。

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増上寺と東京タワーの夕暮れ散歩記|浜松町・芝神明榮太樓と越後酒房 八海山

浜松町駅から増上寺へ向かう、夕暮れ散歩記。東京タワーを眺め、芝神明榮太樓で和菓子を買い、夜は「越後酒房 八海山」で同僚と女子会を楽しみました。


以前、一緒に働いていた同僚と、彼女たちの仕事終わりに、ご飯を食べに行くことになった。

JR山手線・京浜東北線の浜松町駅。

私にとっては、若い頃から、ご縁のある場所。

その話は、いずれまた……。

16時45分過ぎ。

私のプランニングミスで、待ち合わせより、うんと早く到着した。

浜松町の北口。
改札を出て左手側に、東京タワーが見える。

そうだ、東京タワーがしっかり見えるところまで歩いてみよう。

そう思い、横断歩道を渡って、竹芝通り沿いを進んでいく。

大門と芝大門の交差点を、そのまま直進すると、徳川家康ゆかりの古刹、増上寺 の三解脱門(さんげだつもん)が見えてくるはずだ。

朱塗りで、堂々とした存在感を放つ。
まさに、将軍家が建立した門だ。
1622年に再建された国の重要文化財であり、都内でこれほど大きな木造の歴史的な建造物が残っているのは非常に珍しい。

ところが、
私の目がおかしいのかしら?

アレアレ……と引き寄せられるように、三解脱門前の横断歩道まで来てしまった。

浜松町駅から、徒歩で10分ぐらいだ。

どうやら、工事をしているようだ。

約50年ぶりの保存修理工事を行なっており、完了は2032年(令和14年)11月の予定らしい。

せっかくの厳かな門が、すっぽり巨大なメッシュシートに覆われている。

……なのに、どこか可愛らしい。

もしかして、入れないのかしら?

横断歩道を渡ると、工事で囲われた三解脱門に吸い込まれていく人を追って、私も中へ。

お馴染みの増上寺ではない空間。

なんと、趣き深いこと。

時間を忘れ眺めていた。

「あっ、いけない。」
増上寺と東京タワーのシルエットに、見惚れている場合ではない。

お坊様が大殿の扉を閉め始めていた。

「夕焼けこやけ」のチャイムが、境内に広がっていく。

せっかく来た歴史ある増上寺。
参拝が出来なかったのは残念。

きっと、「また、いらっしゃい。」ということなのだろうと、お寺を後にした。

次に向かうは、和菓子屋さん。

浜松町駅で下車した時は、ほぼ必ず立ち寄らせていただいている。

芝大神宮 の近くに店を構えている。
この神社の通称は、芝神明(しばしんめい)。

竹芝通りを、JR浜松町駅を背にして進む。

増上寺へ向かう大通りの右側。

大門交差点を渡り、一つ目の「芝神明商店街」と書かれた道を右折する。

そのまま直進すると、右側に「芝榮太樓」と書かれた立て看板が見えてくる。

なんと、この文字は、芸術家の 岡本太郎 さんが書かれたもの。
先代と親交が深かったそうだ。

ところで、こちらを覚えておられる方はいらっしゃるかしら。

「はーい、えいたろうです。」

テレビCMで流れていた、あの榮太樓總本鋪 。

そこで修行し、暖簾分けを許されたのが、「芝神明榮太樓」。

1885(明治18)年、この芝の地に創業したそうだ。
店舗では、和菓子の販売のみで、飲食は出来ない。


最中(もなか)の、「葵玉梓(あおいたまずさ)」。

兵庫県丹波市の丹波大納言(たんばだいなごん)という小豆を使い、およそ6時間をかけて、人の手で練り上げている。


お届けできているかしら。
餡(あん)が、ツヤツヤ。
絶妙な甘さで、上品で、ものすごく美味しい。

最中にかたどられた、徳川家の葵の御紋。
賞味期限も数日なので、本当に丁寧に作られているのが伝わってくる。

90歳を過ぎた父。
餡子(あんこ)の和菓子に目がない。

スーパーで手軽に買える和菓子から、高級なお菓子まで、色々食べてきた。

そんな父が、こちらの最中を食べるといつも、「これはまた、一級品だね。美味しいね。」と、にこにこ顔だ。

父の笑顔を見たくて、近くへ寄ったら必ず買う。

なのに、
私はいつも店頭で、

「たまかずら」だったか、
「たまあずさ」だったか……

と、盛大に間違えてしまう。

どうにも、正しい商品名を伝えられたことがない。

面目ない。

商品は、ほかにも「江の嶋最中」や、どら焼き、本煉羊羹など。
どれも、心に染み渡る美味しさだ。
贈答品としても、ぜひおすすめしたい和菓子である。

和菓子販売 芝栄太楼 - 東京 芝大門 浜松町の和菓子屋 - 最中 お土産

そうこうしているうちに、同僚との待ち合わせの時間だ。

大門交差点近くにある、「越後酒房 八海山 浜松町本店」 へ。

4階にあるのだが、1階のエレベーター前も、4階のお店の入り口も人が並んでいて、あえて写真は撮らなかった。

予約をしていたので、席へ通される。

ほぼ個室。
同僚は、すでに到着していた。
店内は清潔感があり、居心地がいい。

「八海山」という店名に相応しく、色々な種類の日本酒が揃っていた。

注文はQRコードを使い、携帯電話から発注。
呼び鈴もあり、店員さんは、どちらからでも呼ぶことが出来る。

私たちはいつもアラカルトだ。
メニューを見て、そのとき食べたいものを選ぶ。
コースより、ほんの少し割高かもしれないけれど。

お料理は盛り付けが美しく、何を食べても美味しかった。

ほぼ個室のような空間なのに、空いたお皿もすぐに片付けに来てくれる。

日本酒好きの女性は少ないので、希少な仲間だ。
それぞれの近況報告や、たわいない愚痴をこぼしながらも、楽しい女子会。

「ここ美味しいね。また来ようね。」
そう何度も繰り返しながら、素敵なひと時を過ごした。

帰りのエレベーターは、やはり混んでいた。

駅までの帰り道。少し風が肌寒い。

けれど、皆、いい表情。

私の心も、久しぶりにほっこりしていた。

人気店なので、事前のネット予約が確実です!スマホからいつでも席を確保できますよ。(夜の予約ならポイントも貯まります)